施設の利用例

薄膜の形成

 本施設には,複数のスパッタリング装置が設置されており,金属,酸化物,化合物,半導体などの成膜をナノメートルの精度で行うことができます。チャンバ内に8つのターゲットを備えたもの,3つのターゲットを備えものがありますので,Si基板上などに下地層,金属膜,酸化防止膜で構成される3層膜,金属膜上の誘電体の反射防止膜の形成,CoFeB/Cu/CoFe/MnIrなどで構成される巨大磁気抵抗(GMR)膜などを真空一貫で成膜することができます。また,層厚制御機構により,[Pt(1.2 nm)/Co(0.3 nm)]×20周期などの多層構造膜も作成可能です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

微細パターン形成

 マスクアライナを利用した光リソグラフィと電子線描画装置によるEBリソグラフィを行うことができます。リソグラフィには,レジストの選択,レジスト塗布,露光後の現像,レジストの剥離などの多くのプロセスが含まれるため,初学者には,これらのプロセスの条件出しはハードルが高く感じられると思われます。本施設では,お試し用のレジストを無償で提供するとともにレジスト塗布・露光などのレシピをお示しし,リソグラフィに関わるノウハウを提供しますので,初心者の方でも問題ありません。もちろんレジストパターン形成後の薄膜のエッチングについても,反応性エッチング(RIE),ICPエッチング,SIMS付きECRエッチングなどの装置による支援をいたします。
 また,光リソグラフィでは,フォトマスクが必要となりますが,フォトマスクについても電子線描画装置あるいはレーザ描画装置で作成することができます。レーザ描画装置は,本施設の装置ではありませんが,ナノプラットフォーム事業にお申し込みいただくと利用可能です。
比較的,簡便なプロセスで作成可能な微細パターンの例として,半導体や金属の薄膜をストライプパターンやドットパターンに加工するという単純なプロセスの場合,光リソグラフィでは,1〜2μm,電子線リソグラフィでは,30〜80nmのパターン形成が比較的容易に作成できます。一方,微小な半導体素子の接合部分に微細な電極を形成するといった要求に対しては,微細パターンを形成後にさらに微細パターンを位置合わせして形成する必要があり,よりレベルの高い技術が求められます。図1は,光リソグラフィで形成した電極パターン(幅100μm)の中央部分に120×180 nm^2のスピン注入素子の接合部分を電子線リソグラフィにより形成した例を示しています。図には示されていませんが,接合部分の上にさらに光リソグラフィで上部電極を形成しています。このような素子を作成する場合,薄膜の形成と微細加工を繰り返し行う必要がありますから,プロセスが複雑になりますが,基本的にすべてのプロセスを本施設で行うことが可能です。

 


さまざまなプロセス装置の利用

 本施設には,特殊なプロセス装置があり,工夫次第でさまざまな研究に利用することができます。例えばイオン注入装置は,加速電圧5〜200 kVのエネルギーでホウ素や希ガスイオンなどを薄膜表面に注入することができます。この装置は,当初,半導体材料に不純物イオンを注入するために導入されたものですが,最近は,磁性パターンの形成や放射線検出用乾板の開発など,新しい応用にも利用が広がっています。図3は,L10規則合金層のMnGa薄膜上に微細なレジストパターンを形成後にKrイオンを1×1014イオン/cm2注入することによって,L1O規則相の結晶構造を破壊し,強磁性から非磁性への相変化を起こして磁気的なパターンを形成した例を示しています。
 また,SIMS付きECRエッチング装置も本施設で開発した特徴ある装置です。この装置は,Arイオンを加速・照射して薄膜をエッチングする装置ですが,エッチングにより飛び出してくるイオンを高感度で検出する2次イオン検出器(SIMS)を備えているため,リアルタイムでエッチングしている材料の組成を分析することができます。図5は,磁気トンネル素子の材料であるSi基板/CuAl/CoFeB/Al-O/FeCoB/MnIrをSIMS検出しながらArイオンでエッチングした例を示しています。この素子を作成する場合,Al-O層が削られた時点でエッチングを止める必要がありますが,エッチング開始して1200秒後にAlが明瞭に観察されていますので,エンドポイント検出が可能であることがわかります。

 

 

 

薄膜のさまざまな構造・表面分析

 本施設には,材料,特に薄膜材料の構造解析・表面分析を行う装置群が整えられています。半導体,磁性体,誘電体などいずれの材料においても,薄膜を作成した場合,膜厚の測定,X線回折による結晶構造の解析,走査型原子間力顕微鏡(AFM)や走査型電子顕微鏡(SEM)による表面形状,表面モフォロジーの観察,X線光電子分光(ESCA)による電子構造解析などを行うことで,多面的に薄膜の分析が可能となります。
 薄膜の構造解析について初学者の方には,装置利用のインストラクション,測定結果の解析方法などの支援を行っていますので,必要な場合には,本施設のスタッフまでご相談ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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